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応用脳科学アカデミー

2024年度

錯覚の効果と情報提示技術への応用:雨宮 智浩(東京大学 情報基盤センター 教授)

ヒトが外界から受ける感覚情報を処理するとき、刺激を感覚器官によって受容し、それらを総合的に意味づけし、経験や記憶に基づいて解釈をおこなう過程を経ます。五感情報ディスプレイはこうした感覚情報の流れを修飾し、編集するものであり、任意の世界はそれを物理的に忠実に再現した感覚刺激を感覚器に受容させれば生み出すことができるはずです。しかしながら、実際には膨大な情報を処理するための取捨選択や感覚-知覚変換の特性などが原因で、物理的な世界と知覚される主観的な世界との間に隔たりが生じます。中でも本来の客観的特性と異なって知覚される現象は「錯覚」と呼ばれています。多くの場合、この仕組みこそが日々の生活に支障を来すことがないように脳内に構成される世界を安定させ、即座に環境に適応することを可能にしています。そのため、錯覚現象は心理物理学の分野では脳の情報処理機構を探る手がかりとして用いられ、工学の分野では少ないリソースで効果的な情報を提示する原理として、さらに、芸術の分野では世界のとらえ方を問う表現手法としても利用されてきました。本講義では、錯覚、すなわち知覚過程に内在する歪みの特性を積極的に利用した新しい情報提示デバイスの開発と、それを用いて人間の知覚メカニズムに迫る研究を概説し、VRや情報提示技術への応用について解説します。

講師

雨宮 智浩 先生
東京大学 情報基盤センター 教授

日時

2024年9月27日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン開催(Zoom)

お問い合せ先

本講義に関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

雨宮 智浩(あめみや ともひろ)先生

現職

  • 東京大学 情報基盤センター 教授

経歴

2002年3月 東京大学工学部 卒
2004年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科 修士課程修了
2004年4月 – 2019年6月 日本電信電話株式会社 NTT コミュニケーション科学基礎研究所 研究員/主任研究員/特別研究員
2014年3月 – 2015年3月 英国ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 認知神経学研究所 客員研究員(兼任)
2019年7月 – 2023年3月 東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授
2023年4月 – 現在 東京大学 情報基盤センター 教授
2023年4月 – 現在 東京大学 バーチャルリアリティ教育研究センター 教授 兼担

研究概要

人間の錯覚を活用したバーチャルリアリティ(VR)の構成手法、感覚運動インタフェースを中心に研究を進めています。五感の中では特に触覚(体性感覚)や前庭感覚に、また、複数の感覚間の相互作用や感覚運動統合にも興味があります。「だます」「錯覚」といった言葉は一般的には必ずしもポジティブに用いられていないようですが,こうした基礎研究を通じて人間がどのように世界を捉えているかを知ることができます。さらにそうした知見から、感覚と脳と身体にヒューマンインタフェース・インタラクション技術が効果的にはたらきかけることで 身の回りの世界を見たり感じたりするときにこれまでにない斬新な体験を創り出せることができると考えています。

主な業績

  • Tomohiro Amemiya, “Influence of hand-arm self-avatar motion delay on the directional perception induced by an illusory sensation of being twisted”, Scientific Reports, April 2022
  • Tomohiro Amemiya, Kazuma Aoyama, Michitaka Hirose, “TeleParallax: Low-motion-blur Stereoscopic System with Correct Interpupillary Distance for 3D Head Rotations”, Frontiers in Virtual Reality, 2: 726285, October 2021.
  • Tomohiro Amemiya, Michiteru Kitazaki, Yasushi Ikei, “Pseudo-sensation of walking generated by passive whole-body motions in heave and yaw directions”, IEEE Transactions on Haptics, Vol. 13, No. 1, pp. 80-86, Jan.-Mar. 2020.
  • Tomohiro Amemiya, Yasushi Ikei, Michiteru Kitazaki, “Remapping Peripersonal Space by Using Foot-Sole Vibrations Without Any Body Movement”, Psychological Science, Vol. 30, No. 10, pp. 1522–1532, Oct. 2019.
  • Tomohiro Amemiya, Brianna Beck, Vincent Walsh, Hiroaki Gomi, Patrick Haggard, “Visual area V5/hMT+ contributes to perception of tactile motion direction: a TMS study”, Scientific Reports, Vol. 7, 40937, Nature Publishing Group, Jan. 2017.
  • Tomohiro Amemiya, Hiroaki Gomi, “Active Manual Movement Improves Directional Perception of Illusory Force”, IEEE Transactions on Haptics, Vol. 9, No. 4, pp. 465-473, Oct.-Dec. 2016.
  • Tomohiro Amemiya, Taro Maeda, “Asymmetric Oscillation Distorts the Perceived Heaviness of Handheld Objects”, IEEE Transactions on Haptics, Vol. 1, No. 1, pp. 9-18, Jan-Jun, 2008.
             

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