脳科学分野におけるELSI:中澤 栄輔(東京大学大学院 医学系研究科 医療倫理学分野 講師)
脳科学分野は急速に発展しています。それにより、わたしたち市民は脳科学研究の恩恵を受けることができます。しかし、それと同時に、わたしたちは脳科学研究の成果がわたしたちの従来の社会や人間観にどのように影響を及ぼすのか、吟味する必要があります。例えば、治療を超えて人間の能力の増強を目的とした医療的な介入である「エンハンスメント」は、わたしたちの社会にどのようなインパクトをもたらすでしょうか。また、わたしたちの人間観にどのような影響を与えるのでしょうか。この講義では、脳科学分野のELSIについてこれまでの議論を概観するとともに、認知や情動にたいしてエンハンスメントを目的として医療的な介入を行うことの社会的・人間的な影響について考えてみたいと思います。
講師
中澤 栄輔 先生
東京大学大学院 医学系研究科 医療倫理学分野 講師
日時
2024年07月12日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
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場所
オンライン
お問い合せ先
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講師紹介
中澤 栄輔(なかざわ えいすけ)先生
現職
- 東京大学大学院 医学系研究科 医療倫理学分野 講師
経歴
- 2000年3月 日本大学文理学部卒業
- 2002年3月 日本大学大学院文学研究科哲学専攻博士前期課程修了
- 2006年3月 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻(科学史・科学哲学)修士課程修了
- 2009年3月 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻(科学史・科学哲学)博士課程修了
- 2009年4月 東京大学グローバルCOE 「共生のための国際哲学教育研究センター」特任研究員
- 2011年4月 東京大学グローバルCOE 「共生のための国際哲学教育研究センター」特任助教
- 2012年4月 東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻医療倫理学分野特任助教
- 2013年5月 東京大学医学部健康総合科学科保健管理学教室助教
- 2017年6月 東京大学医学部健康総合科学科保健管理学教室講師
- 2017年6月 東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野講師
研究概要
自然主義という哲学的立場から、主に脳科学と共に生じる倫理的問題を理論的に研究しています。医療の現場、科学の現場と哲学・倫理理論を横断する研究であり、その中には研究者に対する倫理的支援も含まれます。終末期医療や生殖補助医療、臓器移植や再生医療、脳科学を始めとした先端医科学技術など、科学と人間とのあいだで「今まさに生じている」摩擦について、医療の最前線、研究の最前線で困難を抱える人と共に、問題の解決を哲学の立場から取り組んでいます。
主な業績
- Nakazawa E, Yamamoto K, Tachibana K, Toda S, Takimoto Y, Akabayashi A. 2016. Ethics of Decoded Neurofeedback in Clinical Research, Treatment, and Moral Enhancement. American Journal of Bioethics Neuroscience 7(2): 110–117.
- Sadato N, Morita K, Kasai K, Fukushi T, Nakamura K, Nakazawa E, Okano H, Okabe S. 2019. Neuroethical issues of the Brain/MINDS project of Japan. Neuron 101 (February 6, 2019):385–389. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2019.01.006
- Nakazawa E, Yamamoto K, Akabayashi A, Shaw MH, Demme RA, Akabayashi A. 2020. Will you give my kidney back? Organ restitution in living related kidney transplantation: Ethical analyses. Journal of Medical Ethics 46:144–150. doi:10.1136/medethics-2019-105507
- 中澤栄輔. 2020. 臨床研究の歴史と研究倫理.『整形外科』71(6):598–601.