脳が学習するしくみを理論的に研究する:豊泉 太郎(理化学研究所 脳神経科学研究センター 数理脳科学研究チーム チームリーダー)
脳は神経回路を経験に応じて変化させることで様々な環境に適応している。その際、神経細胞間の情報伝達を担うシナプスの強度は神経活動に応じて変化することが知られている。本講義では、神経細胞が効率的に情報を伝えているという最適化の視点を導入することで、シナプスの学習法則や神経回路の学習機構の理解を目指す。
講師
豊泉 太郎 先生
理化学研究所 脳神経科学研究センター 数理脳科学研究チーム チームリーダー
日時
2021年10月19日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※豊泉先生の講義は、14:20~15:30です。
場所
オンライン開催
お問い合せ先
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講師紹介
豊泉 太郎(とよいずみ たろう)先生
現職
- 理化学研究所 脳神経科学研究センター 数理脳科学研究チーム チームリーダー
経歴
- 2001年3月 東京工業大学 理学部 物理学科 卒業
- 2003年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 修士課程 修了
- 2006年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 博士課程 修了
- 2006年4月 日本学術振興会 ポスドク研究員(理化学研究所 脳科学総合研究センター,コロンビア大学 理論神経科学センター)
- 2008年3月 The Robert Leet and Clara Guthrie Patterson Trust ポスドク研究員(コロンビア大学 理論神経科学センター)
- 2010年4月 理化学研究所 脳科学総合研究センター 基礎科学特別研究員
- 2011年4月 理化学研究所 脳科学総合研究センター チームリーダー
- 2018年4月 理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー
- 2019年4月 東京大学大学院 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 連携教授
研究概要
数理モデルの解析を通して,脳の神経回路が環境に対して適応し,学習するメカニズムの研究をしている.統計力学や情報理論などで培われた解析技術をコンピュータシミュレーションと組み合わせることにより,神経回路網が適切に機能する為に必要な基本的原理の理解を目指している.特に,神経細胞がその活動に応じて自身の性質を変化させる現象(神経可塑性)は脳の学習,記憶,発達に大きな役割を果たしている.数理的なモデルを駆使して,細胞レベルから回路レベルの知見を包括する可塑性の理論の構築を目指している.更に,その結果形成される神経回路がどのような情報処理の性能を持つかを予測する.
主な業績
- Ito Y and Toyoizumi T.: “Learning poly-synaptic paths with traveling waves” PLOS Computational Biology 17, e1008700 (2021), 10.1371/journal.pcbi.1008700
- Isomura T and Toyoizumi T.: “Dimensionality reduction to maximize prediction generalization capability” Nature Machine Intelligence 3, 434-446 (2021), 10.1038/s42256-021-00306-1
- Kusmierz L., Ogawa S. and Toyoizumi T.: “Edge of chaos and avalanches in neural networks with haeavy-tailed synaptic weight distribution” Physical Review Letters, 125, 028101 (2020), 10.1103/PhysRevLett.125.028101
- Legaspi R. and Toyoizumi T.: “A Bayesian psychophysics model of sense of agency” Nature Communications 10:4250 (2019), 10.1038/s41467-019-12170-0
- Humble J., Hiratsuka K., Kasai H., and Toyoizumi T.: “Intrinsic Spine Dynamics Are Critical for Recurrent Network Learning in Models With and Without Autism Spectrum Disorder” Frontiers in Computational Neuroscience 13:38 (2019), 10.3389/fncom.2019.00038
- Buckley C L and Toyoizumi T.: “A theory of how active behavior stabilizes neural activity: neural gain modulation by closed-loop environmental feedback” PLOS Computational Biology , 14, e1005926 (2018), 10.1371/journal.pcbi.1005926
- Tajima S, Mita T, Bakkum D, Takahashi H, and Toyoizumi T.: “Locally embedded presages of global network bursts” Proc. Natl. Acad. Sci, 114, 9517-9522 (2017), 10.1073/pnas.1705981114
- Huang H and Toyoizumi T.: “Clustering of neural code words revealed by a first-order phase transition” Physical Review E, 93, 062416 (2016), 10.1103/PhysRevE.93.062416