リズムを処理する脳 – ヒトの音楽性の起源 -:藤井 進也(慶應義塾大学 環境情報学部 准教授)
本講義では、リズムを処理する脳の不思議について、皆様と共に、探究してみたいと思います。私自身、ドラマーとしてリズムを演奏します。そのリズム演奏の感覚の中には、宇宙の感覚があります。その感覚を脳科学の観点から眺めてみると、なんとも言えない味わい深さがあります。すなわち、外部世界に存在する時間間隔の連なり(リズム)が、我々の脳という内部世界で処理されると、そこには拍や拍子、そして、グルーヴとよばれる感覚現象が生じます。このようなリズムを処理する脳のメカニズムをじっくり眺め、その背後にある脳の仕組みを深く見つめてみると、実はそれらの現象は、音と身体を一如とし、過去から未来を予測する人間の知性の根源ーヒトの音楽性の起源ーと深く関係していることがみえてきます。本講義では、これまで私がおこなってきた赤ちゃんのダンスに関する研究や、ヒト以外の生物の聴覚運動リズム同期に関する研究、リズム感の個人差や文化差、音楽・言語リズムの脳内処理過程について解説しつつ、リズムを処理する脳の不思議について、皆様と一緒に考究できましたら幸いです。
講師
藤井 進也 先生
慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
VIE STYLE 株式会社 最高音楽責任者
JST さきがけ研究者
日時
2023年11月22日(水)13:00~17:30(12:40より受付開始)第2部 14:20~15:30
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催
お問い合せ先
本アカデミーに関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。
講師紹介
藤井 進也(ふじい しんや)先生
現職
- 慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
- VIE STYLE 株式会社 最高音楽責任者
- JST さきがけ研究者
経歴
- 2004 アンミュージックスクール京都校 ドラムス科 マスターコース特待生認定 修了
- 2005 京都大学 総合人間学部 自然環境学科 卒業
- 2007 京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程 修了
- 2010 京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士課程 修了,博士(人間・環境学)
- 2007-2010 日本学術振興会 特別研究員DC1(京都大学)
- 2010-2013 日本学術振興会 特別研究員PD(東京大学,ハーバード大学)
- 2013-2015 日本学術振興会 海外特別研究員(トロント大学)
- 2015-2016 東京大学大学院 教育学研究科 特任助教
- 2016-2019 慶應義塾大学 環境情報学部 専任講師
- 2019-現在 慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
- 2022-現在 VIE STYLE 株式会社 最高音楽責任者
- 2023-現在 JST さきがけ 研究者
研究概要
なぜ、私たちヒトの脳・身体には、音楽を聴いて感動したり、癒されたり、音楽に合わせて踊ったり、歌ったり、楽器を奏でたり、音を楽しむ能力が備わっているのでしょうか。私たちが普段何気なく聴き、演奏し、楽しむ音楽は、実はヒトの文化・進化・発達の起源や、社会性や創造性、知覚、認知、運動、記憶、情動、学習といったヒトの脳機能を理解する上で、極めて重要な研究対象です。本研究室では、「音楽神経科学(Neurosciences and Music: NeuroMusic)」をテーマとして、謎に満ちたヒトの音楽性の脳内起源を解き明かすため、研究を行なっています。
主な業績
英字研究論文(抜粋)
- Honda, S., Matsushita, K., Noda, Y., Tarumi, R., Nomiyama, N., Tsugawa, S., Nakajima, S., Mimura, M., & Fujii, S. (2023). Music rhythm perception and production relate to treatment response in schizophrenia. Schizophrenia Research, 252, 69–76.
- Savage, P. E., & Fujii, S. (2022). Towards a cross-cultural framework for predictive coding of music. Nature Reviews. Neuroscience. https://doi.org/10.1038/s41583-022-00622-4
- Fujii, S., & Wan, C. Y. (2014). The Role of Rhythm in Speech and Language Rehabilitation: The SEP Hypothesis. Frontiers in Human Neuroscience, 8, 777.
- Fujii, S., Watanabe, H., Oohashi, H., Hirashima, M., Nozaki, D., & Taga, G. (2014). Precursors of dancing and singing to music in three- to four-months-old infants. PloS One, 9(5), e97680.
- Fujii, S., & Schlaug, G. (2013). The Harvard Beat Assessment Test (H-BAT): a battery for assessing beat perception and production and their dissociation. Frontiers in Human Neuroscience, 7, 771.
- Fujii, S., Kudo, K., Ohtsuki, T., & Oda, S. (2010). Intrinsic constraint of asymmetry acting as a control parameter on rapid, rhythmic bimanual coordination: a study of professional drummers and nondrummers. Journal of Neurophysiology, 104(4), 2178–2186.
- Fujii, S., Kudo, K., Ohtsuki, T., & Oda, S. (2009). Tapping performance and underlying wrist muscle activity of non-drummers, drummers, and the world’s fastest drummer. Neuroscience Letters, 459(2), 69–73.
和字解説論文(抜粋)
- 藤井 進也. 音楽神経科学の研究動向:音楽家の脳から音楽の予測符号化まで. 音楽知覚認知研究. 第28巻2号 pp. 101-122, 2023.
- 藤井 進也. 連載 音楽リズムと身体の共鳴―1-6. 体育の科学. 第72巻2-6号, 2022.
- 藤井進也. 巧みな音楽家の演奏にみられる時間のゆらぎとグルーヴ. バイオメカニズム学会誌 第44巻4号, pp. 217-222, 2020.
- 藤井進也. 平成時代:音楽と神経科学の邂逅. KEIO SFC JOURNAL 第18巻1号 pp. 186-201, 2018.
和字解説記事(抜粋)
- ドラムと研究の両輪で、音楽と人間の本質に迫る(前編) – 奏者からドラマー研究の開拓者へ –NTTコミュニケーション科学基礎研究所, Hearing X, 2022年03月.
- ドラムと研究の両輪で、音楽と人間の本質に迫る(後編) – 多様性のサイエンスから人間とは何かを解き明かしたい –NTTコミュニケーション科学基礎研究所, Hearing X, 2022年03月.
- Interview − 藤井進也[慶應義塾大学 環境情報学部 准教授/SFC研究所 エクス・ミュージック ラボ代表、etc.]リズム&ドラム・マガジン編集部, リズム&ドラム・マガジン Web, 2022年02月
その他業績については研究室ホームページをご覧ください:https://neuromusic.sfc.keio.ac.jp/?page_id=700&lang=ja