脳と機械を繋ぐブレインマシンインターフェース(BMI)の現状と課題:海住 太郎(国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet) 研究員)
脳とコンピュータを接続し、利用者の意図を解読してロボットハンドなどの操作を可能にするBMI技術が期待と注目を集めています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄損傷、脳卒中など、運動機能の障害に対するサポート技術として開発が始まったBMIですが、近年では視覚障害などの感覚機能の補助、あるいは精神疾患などにも幅広い応用例が示されつつあります。また、イーロン・マスク氏率いるニューラリンクなどスタートアップや産業界の参入もあり、世界中でホットな開発競争が進められています。本講義では最新の知見をコンパクトに紹介し、今後の発展について議論します。
また、BMIの実現には脳活動を読み取るためのセンサが必要不可欠です。しかし、脳情報の高精度な読み取りにはセンサを脳に差し込む必要があり、社会展開が阻まれてきました。我々は、脳の表面にシート状の電極を貼り付ける手法(皮質脳波法)に着目し、1000点超の計測点を配置した超高密度多点シート電極の開発と、その優れた計測性能の実証に成功しました。CiNetが進めるBMI基盤技術開発をご紹介します。
講師
海住 太郎 先生
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)脳機能解析研究室 研究員
日時
2024年12月06日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)第2部 14:20~15:30
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
海住 太郎 (かいじゅう たろう)先生
現職
- 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)研究員
- 大阪大学大学院生命機能研究科 招へい教員
経歴
- 2013年4月 大阪市立大学医学部卒
- 2013年4月-2015年3月 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 臨床研修医
- 2015年4月-2018年3月 大阪大学大学院生命機能研究科 博士(工学)
- 2017年11月-現在 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 研究員
研究概要
脳とコンピュータを接続する技術であるブレインマシンインターフェース(BMI)技術の研究開発に従事しています。
BMIの社会展開を進めるためのカギは計測技術にあるとの考えから、脳活動を読み取るためのセンサ(神経電極)の高性能化や生体適合性の向上を目指した取り組みを行っています。
主な業績
- ”High-density mapping of primate digit representations with a 1152-channel µECoG array” , Taro Kaiju, Masato Inoue, Masayuki Hirata, Takafumi Suzuki, Journal of Neural Engineering, vol.18 (3), pp.1-13, 2021.2
- ”A Behavioral Paradigm to Study Rats Dual-Task Performance under Head-Direction and Body-Location Tracking” , Kohei Matsuo, Taro Kaiju, Tomoaki Nakazono, Kei Watanabe, Takafumi Suzuki, Electronics and Communications in Japan, vol.100 (11), pp.3-14, 2017.11
- ”Long‐Term Implantable, Flexible, and Transparent Neural Interface Based on Ag/Au Core–Shell Nanowires” , Teppei Araki, Fumiaki Yoshida, Takafumi Uemura, Yuki Nod, Shusuke Yoshimoto, Taro Kaiju, Takafumi Suzuki, Hiroki Hamanak, Kousuke Baba, Hideki Hayakawa, Taiki Yabumot, Hideki Mochizuki, Shingo Kobayashi, Masaru Tanaka, Masayuki Hirata, Tsuyoshi Sekitani, Advanced Healthcare Materials, vol.8 (10) :e1900130, pp.1-7, 2019.5
- ”High Spatiotemporal Resolution ECoG Recording of Somatosensory Evoked Potentials with Flexible Micro-Electrode Arrays” , Taro Kaiju, Keiichi Doi, Masashi Yokota, Kei Watanabe, Masato Inoue, Hiroshi Ando, Kazutaka Takahashi, Fumiaki Yoshida, Masayuki Hirata, Takafumi Suzuki, Frontiers in Neural Circuits, vol.11 (20), pp.1-13, 2017.4
- 『侵襲型BMI』 海住太郎、鈴木隆文, 医学のあゆみ vol.275 (12,13),pp.21567-21571, 2020.12