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応用脳科学アカデミー

2024年度

文脈に操られる運動の記憶:羽倉 信宏(情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員)

マルセル・プルーストの「失われた時をもとめて」の冒頭では、紅茶に浸したマドレーヌを口にした主人公は鮮やかに昔の記憶を思い出します。つまり、「記憶」はそれが作られたときの状況、すなわち、「文脈」と紐づいており、その文脈が手がかりとなって、自動的に思い出されるわけです。今回の講演では、私たちの身体の動かし方の記憶(「運動の記憶」)も、まったく同じように文脈に紐づけられ、文脈によって自動的に呼び覚まされることを紹介します。そして、果たしてどのような情報が運動記憶の「文脈」となりうるのかについて検討します。
最後に、「迷い」が運動記憶の文脈になる、という私たちの最近の成果をご紹介いたします。
合わせて、私たちの外界の認識と、外界に働きかけるための運動は切り離せない、ということを伝えることができればうれしいです。

講師

羽倉 信宏 先生
情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員

日時

2024年9月20日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)第2部 14:20~15:30
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン開催(Zoom)

お問い合せ先

本講義に関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

羽倉 信宏(はぐら のぶひろ)先生

現職

  • 情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員
  • 大阪大学大学院 生命機能研究科 招へい准教授

経歴

  • 2003年 慶應義塾大学文学部卒業
  • 2008年 京都大学大学院人間・環境学研究科修了(人間・環境学 博士)
  • 2008年-2010年 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 研究員
  • 2010年-2015年 Institute of Cognitive Neuroscience、University College London 研究員
  • 2015年-2021年 情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet) 研究員
  • 2021年‐現在:情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室 主任研究員(研究室主宰者)

研究概要

ヒトはどのような脳の働きを介して自分自身や外の世界を認識しているのでしょう?あなたと私とでは、果たして同じように世界を認識しているのでしょうか?CiNet羽倉グループでは、この問いが「環境の中でヒトがどのように身体を動かすのか」、とリンクしていると信じて研究をすすめています。

  • 私たちはどのように効率的に身体の動かし方を学習・記憶し、それを適切なタイミングで呼び出し、実行するのでしょう?
  • 私たちは自分自身の行為や自分の身体の形・大きさをどのように認識しているのでしょう?
  • 私たちの認知や意思決定は、どのように自分の身体や行為によって制約されているのでしょう?

これらの問いについて、心理・行動学的手法や計算論モデリング、脳機能イメージングや脳刺激法を駆使し、解明することを目標としています。
研究を通して、我々がナイーブに持っている「ヒト観」を更新できるような、「おもろい」研究を目指しています。

主な業績

主な論文
  1. Kisho Ogasa, Atsushi Yokoi, Gouki Okazawa, Morimichi Nishigaki, Masaya Hirashima, Hagura N*. Decision uncertainty as a context for motor memory. Nature Human Behaviour. 2024
  2. Hagura N*, Haggard P, Diedrichsen J. Perceptual decisions are biased by the cost to act. eLife, pii: e18422. 2017
  3. Hagura N*, Barber H, Haggard P*. Food vibrations: Asian spice sets lips trembling. Proceedings of the Royal Society B; Biological Sciences. 280: 20131680. 2013.
  4. Hagura N*, Kanai R, Orgs G, Haggard P. Ready steady slow: action preparation slows the subjective passage of time. Proceedings of the Royal Society B; Biological Sciences. 279: 4399-4406. 2012
主な著書・編著書
  • 「日常と非日常からみる心と脳の科学」 (編者:宮崎 真、阿部匡樹、山田祐樹、羽倉信宏、他)コロナ社 2017
  • 「Clinical Systems Neuroscience」Springer(2015)(分担執筆)
  • 「心理学概論 (京都大学心理学連合編)」ナカニシヤ出版(2011)(分担執筆)
  • 「脳から見たリハビリ治療―脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方」講談社ブルーバックス(2005)(分担執筆)

             

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