揺らぎを活かす脳の計算学習理論:寺前 順之介(京都大学 大学院情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座 准教授)
脳は約千億のニューロンがそれぞれ数千のシナプスを介して互いに結合し合う巨大なネットワークである。興味深いことに脳内では、ニューロンの活動とシナプスの変化との両方が、自発性に、しかもランダムに動作することが分かっている。例えばこのニューロンの自発活動だけで、脳の消費エネルギーの8割以上が使用されているという概算もある。なぜ脳は膨大なエネルギーを消費してまでこのようなランダムな活動を持続しているのだろうか?なぜ高い精度と信頼性を持つ生物の情報処理が、このようなランダムな基盤の上に実現され得るのだろうか?この講義ではこのランダムな自発活動を軸に、ランダムさを利用する脳の計算原理と学習メカニズムに関する最新の研究成果を紹介する。
講師
寺前 順之介 先生
京都大学 大学院情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座 准教授
日時
2024年11月12日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
※当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
寺前 順之介(てらまえ じゅんのすけ)先生
現職
- 京都大学 大学院情報学研究科 先端数理科学専攻 非線形物理学講座 准教授
経歴
- 1998年 京都大学理学部卒業
- 2003年 京都大学理学研究科博士課程修了 理学博士
- 2003年 – 2005年 玉川大学学術研究所 研究員
- 2005年 – 2008年 独立行政法人理化学研究所 脳回路機能理論研究チーム 研究員
- 2008年 – 2010年 独立行政法人理化学研究所 脳回路機能理論研究チーム 基礎科学特別研究員
- 2009年 – 2013年 科学技術振興機構さきがけ研究員(兼任)
- 2010年 – 2012年 独立行政法人理化学研究所 脳回路機能理論研究チーム 副チームリーダー
- 2012年 – 2018年 大阪大学 情報科学研究科 准教授
- 2018年 – 京都大学 情報学研究科 准教授
研究概要
数理的観点から脳の計算原理を探求する研究を行っている。特に大脳皮質の確率的な自発活動の生成メカニズムやダイナミクスと機能に着目することで、既存の機械学習や人工知能の限界を超える、自発性や確率性を活かす脳型計算機の構築と学習理論の解明を目指している。
主な業績
論文
- “Dual sampling neural network: Learning without explicit optimization”, J Teramae, Y Tsubo, Physical Review Research, 4(4), 043051
- “Optimal spike-based communication in excitable networks with strong-sparse and weak-dense links”, J Teramae, Y Tsubo, T Fukai, Scientific reports 2 (1), 1-6
- “Local cortical circuit model inferred from power-law distributed neuronal avalanches”, J Teramae, T Fukai, Journal of computational neuroscience 22 (3), 301-312
- “Stochastic phase reduction for a general class of noisy limit cycle oscillators”, J Teramae, H Nakao, GB Ermentrout, Physical review letters 102 (19), 194102
解説・総説
- 「数理のクロスロード(第13回)脳と知能の数理:理論神経科学の最前線(1)神経細胞の数学」, 寺前 順之介, 数学セミナー 58(1) 70 – 73 2019年1月
- 「数理のクロスロード(第14回)脳と知能の数理:理論神経科学の最前線(2)神経細胞ネットワークの数学」, 寺前 順之介, 数学セミナー 58(2) 72 – 75 2019年2月
- 「数理のクロスロード(第15回)脳と知能の数理:理論神経科学の最前線(3)ニューラルネットワークの構造と機能」, 寺前 順之介, 数学セミナー 58(3) 56 – 59 2019年3月