料理と美―ガストロノミー(美食学)の最前線から―:生江 史伸(レストラン レフェルヴェソンス エグゼクティブシェフ)
料理の美学とその心理的・文化的意義について考察します。
まず、神人共食の直会や東日本東北大震災での炊き出しでのエピソードを通じ、美食が単なる栄養摂取にとどまらず、精神的な活力をも提供することを示します。アンセルム・ブリア=サヴァランの「美味礼讃」を引き合いに出し、美食の歴史的背景とその価値を探ります。さらに、料理の視覚的美しさや、右利き・左利きに配慮した用の美、食欲の低下した高齢者に対する視覚的アプローチの重要性についても議論します。また、アシンメトリック・ヘテロジェニュイティな美や和食の「淡味」に代表される不完全さの美学も取り上げます。「美味しい」という表現の成り立ちや、トリュフ、フォワグラ、キャビアといった希少食材に対する美食家の探求心も掘り下げ、これが芸術作品の価値評価と類似する点を考察します。近年の神経科学と分子生物学の進展が、美食の評価に与える影響も解説し、ネーチャーポジティブな食品・食料の重要性を強調します。これらを通じて、料理人の哲学と美食の未来について展望します。
講師
生江 史伸 先生
レストラン レフェルヴェソンス エグゼクティブシェフ
日時
2024年11月20日(水)13:00~17:30(12:40より受付開始)第2部 14:20~15:30
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催(Zoom)
お問い合せ先
本講義に関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。
講師紹介
生江 史伸(なまえ しのぶ)先生
現職
- レストラン レフェルヴェソンス エグゼクティブシェフ
経歴
1973年に横浜で生まれ。
慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、イタリアンレストランでの勤務やミシュラン三つ星レストラン「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」および「ザ・ファット・ダック」でスーシェフとしての経験を積む。
2010年に東京でレフェルヴェソンス(L’Effervescence)を統括シェフとして開店。現在ミシュランガイド東京版 三つ星およびグリーンスター。
2023年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科(農学修士課程)を修了。
研究概要
ガストロノミーと持続可能なフードシシテムについて
主な業績
- 2018年「アジアのベストレストラン50」で「持続可能なレストラン賞」、2023年には「アイコン賞」を受賞。
- 2022年の世界海洋デーに国連本部で講演。
- 2023年文化庁長官表彰