音楽の認知科学的理解は，音楽特有の現象だけでなく，ヒトの本質を理解する上でも重要な鍵となる．例えば，音楽は，聴覚だけでなく，ヒト一般的な，行動，情動，学習，社会コミュニケーションなどの多くの脳機能と密接に関与している．近年，脳の一般原理である予測処理に基づく「統計学習機能」の観点から，音楽と脳の関係を説明しようという動きが活発化している．統計学習は，人間の脳の生来の暗黙の機能であり、脳の発達および個性の形成に密接に関連している。これは、人生の早い段階で始まり、音楽の創作と理解において重要な役割を果たす．学習を通して，脳は統計モデルを更新し続けていくため，受ける刺激の種類と程度に応じてそのモデルの個性が生じる．本発表では，脳内の統計学習の枠組みの中で，音楽の創造性や個性がどのように生じるかについて，神経学的および計算論的研究の一連の成果をお話しする．

講師

大黒 達也 先生
東京大学 次世代知能科学研究センター 准教授

日時

2024年10月23日（水）13:00～17:30（12:40より受付開始）第3部 15:40～16:50
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン開催（Zoom）

お問い合せ先

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講師紹介

大黒 達也（だいこく たつや）先生

現職

• 東京大学 次世代知能科学研究センター 准教授

経歴

• 2016年4月 – 2016年11月　英オックスフォード大学, Post-doc researcher
• 2016年4月 – 2017年4月　東京大学, Visiting Researcher
• 2016年12月 – 2019年12月　独マックスプランク研究所, Scientific researcher
• 2019年9月 – 現在　英ケンブリッジ大学, Centre for Neuroscience in Education, Researcher
• 2022年9月 – 現在　広島大学, 客員准教授
• 2020年4月 – 2023年3月　東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任助教
• 2023年4月 – 2024年3月　東京大学 大学院情報理工学系研究科, AIセンター, 特任講師
• 2024年4月 – 現在　東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授

研究概要

• 音楽の身体知
• 創造性の神経科学的・計算論的基盤
• 統計学習
• 自動作曲

主な業績

[1] T. Daikoku, M. Tanaka, S. Yamawaki (2024) Bodily maps of uncertainty and surprise in musical chord progression and the underlying emotional response. iScience 27(4): 109498, DOI:10.1016/j.isci.2024.109498
[2] E. Smalle et al.(2/5) (2022) Unlocking adults’ implicit statistical learning by cognitive depletion. PNAS 119(2):e2026011119, 9p, DOI: 10.1073/pnas.2026011119
[3] *T. Daikoku, U. Goswami (2022) Hierarchical amplitude modulation structures and rhythm patterns: Comparing Western musical genres, song, and nature sounds to Babytalk. PLOS ONE, 17(10):e0275631, 27p, DOI:10.1371/journal.pone.0275631
[4] *T. Daikoku et al. (1/7) (2023) Neural correlates of statistical learning in developmental dyslexia: An electroencephalography study. Biological Psychology 181, 108592, DOI:10.1016/j.biopsycho.2023.108592
[5] *T. Daikoku, M. Yumoto (2020) Musical Expertise Facilitates Statistical Learning of Rhythm and the Perceptive Uncertainty: A cross-cultural Study, Neuropsychologia, 146:107553, 13p, DOI: 10.1016/j.neuropsychologia.2020.107553