精神疾患脳画像研究の発展はスティグマ軽減に貢献するか?:小池 進介(東京大学 大学院総合文化研究科 進化認知科学研究センター 心の多様性と適応の連携研究機構 准教授)
スティグマとは偏見や差別のことを指し,より正確に言えば,偏見や差別によって多数派である社会が,少数派である個人の思考や活動を制限することを指す。磁気共鳴画像(MRI)を始めとした脳画像解析法は,ヒトの脳構造,機能の詳細を明らかにし,精神疾患の病態解明にも貢献を果たしてきた。なにより,「精神疾患は脳の機能障害である」という考えが浸透したのは脳画像研究成果によるところが大きく,精神疾患当事者へのスティグマ軽減には一定の貢献を果たしたのではないかと考えている。いっぽう,研究成果の過剰な一般化,誤謬など,スティグマを増大させかねない点は今後も注意を要する。この注意点の代表例が「群間差の個人への適用」であり,まさにスティグマそのものである。しかし,脳画像特徴の個人適用は,近年のAI技術により実現可能性が日に日に高まっており,脳画像を用いた診断補助などはすでに現実的である。本講義では,今後の精神疾患脳画像研究の発展が,人々にどう影響を与えていくかを議論する。
講師
小池 進介 先生
東京大学 大学院総合文化研究科 進化認知科学研究センター 心の多様性と適応の連携研究機構 准教授
日時
2024年10月18日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
小池 進介(こいけ しんすけ)先生
現職
- 東京大学 大学院総合文化研究科 進化認知科学研究センター 心の多様性と適応の連携研究機構 准教授
経歴
2004 東京大学医学部医学科 卒業
2008-2012 東京大学大学院医学系研究科 精神医学分野 医学博士課程
2012-2016 東京大学学生相談ネットワーク本部 精神保健支援室(保健センター精神科)講師
2016- 東京大学心の多様性と適応の連携研究機構(旧,こころの多様性と適応の統合的研究機構)准教授
研究概要
精神疾患の脳画像,思春期脳発達,精神疾患当事者へのスティグマ
主な業績
- Zhu Y, Maikusa N, (58名), Koike S; the ENIGMA Clinical High Risk for Psychosis Working Group: Using brain structural neuroimaging measures to predict psychosis onset for individuals at clinical high-risk. Mol Psychiatry 2024 in press.
- Cai L, Maikusa N, (6名), Koike S: Hippocampal structures among Japanese adolescents before and after the COVID-19 pandemic. JAMA Netw Open 2024;7(2):e2355292.
- Ishida T, Nakamura Y, (24名), Koike S: Aberrant large-scale network interactions across psychiatric disorders revealed by large-sample multi-site resting-state functional magnetic resonance imaging datasets. Schizophr Bull 2023;49(4):933-43.
- Ojio Y, Yamaguchi S, Ohta K, Ando S, Koike S: Effects of biomedical messages and expert-recommended messages on reducing mental health-related stigma: a randomised controlled trial. Epidemiol Psychiatr Sci 2020;29:e74.
- Yamaguchi S, Ojio Y, (6名), Koike S: Long-term effects of filmed social contact or internet-based self-study on mental health-related stigma: a two-year follow-up of a randomised controlled trial. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 2019;54(1):33-42.