計算論的精神医学入門:山下 祐一(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部 室長)
現行の精神障害の診断分類は、患者自身の主観的報告と医師による行動観察に基づいており、生物学的知見・病因・病態生理に基づいた体系になっていない。また、近年の生物学的知見の蓄積によっても、診断、重症度評価、予後や治療反応性予測が可能な生物学的指標が確立されていないという問題を抱えている。精神医学が直面するこれらの問題克服に、脳の計算理論を用いた手法(計算論的精神医学)が有効な研究方略を提供することが期待されている。本講義では、計算論的精神医学の代表的な研究方略を概観し、演者自身の研究を含めた具体的適用事例のいくつかを紹介する。
講師
山下 祐一 先生
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部 室長
日時
2024年10月07日(月)13:00~17:30(12:40より受付開始)第3部 15:40~16:50
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン開催(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
山下 祐一(やました ゆういち)先生
現職
- 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部 室長
経歴
医師、博士(医学)。精神保健指定医、精神科専門医
1998年、東北大学医学部医学科卒業。 同大学附属病院神経精神科にて初期研修の後、東京都立松沢病院精神科・医員として臨床に従事
2006年より、独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター動的認知行動研究チームにて、谷淳氏の指導の下、神経回路モデルとヒューマノイドロボットを用いて高次認知機能・精神疾患の計算モデル研究に従事
2013年から、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部・室長として勤務
研究概要
計算論的精神医学の手法を用いて、精神障害に関する生物学的な知見と行動・症状レベルの臨床的な病像の間を橋渡しするような病態メカニズムの説明を提供し、精神障害の理解と治療法開発を目指した研究を行っている。また、深層学習技術を用いた神経生理学的データ解析手法の開発なども行っている。
主な業績
- Idei H, & Yamashita Y (2024). Elucidating multifinal and equifinal pathways to developmental disorders by constructing real-world neurorobotic models. Neural Networks, 169, 57–74.
- Okimura T, Maeda T, Mimura M, Yamashita Y (2023) Aberrant sense of agency induced by delayed prediction signals in schizophrenia: a computational modeling study. Schizophr 9, 72.
- Yamashita Y, Tani J (2012) Spontaneous Prediction Error Generation in Schizophrenia. PLoS ONE 7(5): e37843.
- Yamashita Y, Tani J (2008). Emergence of functional hierarchy in a multiple timescale neural network model: a humanoid robot experiment. PLoS Computational Biology 4(11): e1000220.
- 国里 愛彦, 片平 健太郎, 沖村 宰, 山下 祐一 (2019) 計算論的精神医学: 情報処理過程から読み解く精神障害, 勁草書房 (東京)