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  4. AIによる自動作曲ソフトを用いた疑似作曲体験が高齢者の認知機能へ与える影響 ~音会 ~:佐藤 正之(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師)

応用脳科学アカデミー

2024年度

AIによる自動作曲ソフトを用いた疑似作曲体験が高齢者の認知機能へ与える影響 ~音会 ~:佐藤 正之(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師)

 近年、人工知能 (AI) の発展が著しい。適当な言葉を入力するだけで、ほぼ無限に画像を作成してくれる。一方、生活習慣病の管理に加え、運動不足や社会的孤立の解消により、認知症のリスクを減らせることが明らかになった。Livingston (2024) の最近の報告では、全 14項目の因子のコントロールにより、認知症患者の 45% は予防可能という (Livingston, Lancet, 2024)。高齢者の文化的活動として、句会や絵画、陶芸教室などがあるが、音楽については鑑賞のみで楽器演奏や作曲は特別なトレーニングを受けてきた者だけが可能である。

 ㈱ Amadeus Code は、AI による自動作曲ソフト “Music Trinity Generative Algorithm-Human Refined (MusicTGA-HR)”を作成した。これは、言葉を入力すると 4~5秒でほぼ無数の音楽を AI が作成してくれる。全世界で 8万件以上の YouTuber に利用されているほか、本邦では某ホテルチェーンが季節ごとの館内 BGM の作成に用いている。

 われわれのグループは、MusicTGA-HR を高齢者の認知機能の維持・改善に役立てられないかと考えた。与えられたお題に対し、MusicTGA-HR を用いてイメージにもっとも合うと感じた楽曲をグループ内で発表し、講師からの講評も得る。われわれはこの活動を、俳句の句会にならい“音会 (おとかい)”と名付けた。週 1回・1時間、音会をオンラインで半年間行い、前後で認知機能を計測したところ、前頭葉機能に有意な改善がみられた (Satoh, Brain & Behavior, in press)。
 本講演では、前半に認知症に対する非薬物療法の現時点でのエビデンスを解説し、後半は最近国際誌に掲載された“音会”について紹介する。

講師

佐藤 正之 先生
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

日時

2024年10月07日(月)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン開催(Zoom)

お問い合せ先

本講義に関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

佐藤 正之(さとう まさゆき)先生

現職

  • 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

経歴

  • 昭和38年 大阪生まれ
  • 昭和57年 大阪府立三国丘高等学校卒業、相愛大学音楽学部器楽科入学
  • 昭和61年 相愛大学卒業。府立高校音楽教諭を経て、
  • 昭和63年 三重大学医学部入学
  • 平成 6年    同    卒業、同大学神経内科に入局
  •      市立伊勢総合病院、東京都神経科学総合研究所等を経て、
  • 平成15年 7月 三重大学医学部神経内科助手
  • 平成21年 1月、東北大学大学院医学系研究科 高齢者高次脳医学講座 准教授
  • 平成22年 4月 三重大学大学院医学系研究科 認知症医療学講座 准教授
  • 令和 2年 8月~ 5年 3月 東京都立産業技術大学院大学 認知症・神経心理学講座 特任教授
  • 令和 5年 8月~ 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 医師

研究概要

専門は神経内科学、神経心理学、認知症医療学。認知症や、失語をはじめとする高次脳機能障害の診療を通して、ヒトの脳機能なかでも音楽の脳内認知機構を中心に研究するとともに、音楽療法のエビデンスの確立を目指して活動している。

主な業績

著書
  • 佐藤正之 「現役医師:その仕事で大事なこと」 22世紀アート、2021、東京
  • 佐藤正之・田部井賢一 「医療関係者のための脳機能研究入門:神経心理学と脳賦活化実験」 北大路書房、2020、京都
  • 佐藤正之 「音楽療法はどれだけ有効か:科学的根拠を検証する」化学同人、2017、京都
  • 佐藤正之 「音楽療法はどれだけ有効か:科学的根拠から探るその可能性」 同人文庫、2023、京都
学術論文(国際誌)
  • Satoh M, Tabei K, Abe M, Kamikawa C, Fujita S, Ota Y. The correlation between a new online cognitive test (the Brain Assessment) and widely used in-person neuropsychological tests. Dement Geriatr Cogn Disord. 2021, 50: 473-481. Doi: 10.1159/000520521. 
  • Satoh M, Tabei K, Fujita S, Ota Y. Online tool (Brain Assessment) for the detection of cognitive function changes during aging. Dement Geriatr Cogn Disord. 50: 85-95, 2021. Doi: 10.1159/000516564.
  • Satoh M, Ogawa JI, Tokita T, Matsumoto Y, Nakao K, Tabei KI, Kato N, Tomimoto H. The Effects of a 5-Year Physical Exercise Intervention with Music in Community-Dwelling Normal Elderly People: The Mihama-Kiho Follow-Up Project. J Alzheimers Dis. 78: 1493-1507, 2020 Nov 7. doi: 10.3233/JAD-200480.
  • Satoh M, Matsuyama H, Asahi M, Matsuura K, Kida H, Tomimoto H. Non-converter mild cognitive impairment with cerebral amyloid angiopathy may be included among persistent amnestic mild cognitive impairment: a case report. Psychogeriatrics, 1-3, 2020. Doi: 10.1111/psyg.12545. 

他国際誌 69編, 国内誌 104編

             

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