個性の脳科学ー環境との相互作用による社会性の形成ー:松田 哲也(玉川大学 脳科学研究所 大学院脳科学研究科 教授)
私たちは、脳内で表象された感覚を認知する際に、記憶を使って理解する。これは、既知の情報を用いて理解できれば対象の情報量が削減でき、省エネで認知することが可能となるためである。ただし、この記憶は、単なる言語的な記憶だけでなく、遺伝的要因のような先天的に決定されているもの、生活習慣、食習慣、加齢、エピゲノム、体内環境なども含まれるため、履歴記憶といった方が適切なのかもしれない。この履歴記憶により個々の価値観が形成され、それを参照することでヒトの意思決定が行われる。履歴記憶は、時々刻々とアップデートされ、価値感も必要に応じて変わるものもある一方で、変わらずより頑強に形成されていくものもあると考えられる。つまり、個と社会との相互作用により揺るがぬ信念を持ちつつ柔軟性をももつ個性が創られていくのである。本講義では、このような観点から生物学的に個性を考えていきたい。
講師
松田 哲也 先生
玉川大学 脳科学研究所 大学院脳科学研究科 教授
日本医療研究開発機構 脳神経科学統合プログラム プログラムオフィサー
日時
2024年07月17日(水)13:00~17:30(12:40より受付開始)第3部 15:40~16:50
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場所
ハイブリッド開催(会場:株式会社NTTデータ経営研究所会議室(千代田区平河町(地図)& Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
松田 哲也(まつだ てつや)先生
現職
- 玉川大学 脳科学研究所 大学院脳科学研究科 教授
- 日本医療研究開発機構 脳神経科学統合プログラム プログラムオフィサー
経歴
- 2004年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了(博士(医学))
- 玉川大学助教、准教授を経て、2015年より現職。
- 2011年から2013年まで 文部科学省研究振興局(科研費担当)学術調査官
- 2016年から2020年まで 文部科学省研究振興局(ライフサイエンス担当)学術調査官
- 2013年から2024年まで 日本医療研究開発機構「革新脳」プログラムオフィサー
- 2018年から2024年まで 日本医療研究開発機構「国際脳」プログラムオフィサー
- 2024年から現在 日本医療研究開発機構「脳神経科学統合プログラム」プログラムオフィサー
研究概要
人間らしさを生み出す脳の働き
環境の変化に柔軟に適応させる脳の働き
認知機能の発達・維持に関連する脳のシステム的理解
主な業績
Ishihara T, Miyazaki A, Tanaka H, Matsuda T. Association of cardiovascular risk markers and fitness with task-related neural activity during animacy perception. Medicine & Science in Sports & Exercise, Accepted DOI:10.1249/MSS.0000000000002963
Ishihara T, Miyazaki A, Tanaka H, Fujii T, Takahashi M, Nishina K, Kanari K, Takagishi H, Matsuda T. Childhood exercise predicts response inhibition in later life via changes in brain connectivity and structure. Neuroimage 237 (2021):118196.
Ishihara T, Miyazaki A, Tanaka H, Matsuda T. Identification of the brain networks that contribute to the interaction between physical function and working memory: An fMRI investigation with over 1,000 healthy adults. Neuroimage 2020 221: 117152. doi: 10.1016/j.neuroimage.2020.117152.
Ito T, Matsuda T, Shimojo S. Functional Connectivity of the Striatum in Experts of Stenography. Brain and Behavior. 2015, 5(5), e00333. DOI: 10.1002/brb3.333.
Nakagawa J, Takahashi M, Okada R, Matsushima E, Matsuda T. Women’s Preference for a Male Acquaintance Enhances Social Reward Processing of Material Goods in the Anterior Cingulate Cortex. PLoS ONE, 2015 10(8): e0136168
Ito T, Wu DA, Marutani T, Yamamoto M, Suzuki H, Shimojo S, Matsuda T. Changing the mind? Not really activity and connectivity in the caudate correlates with changes of choice. Soc Cogn Affect Neurosci. 2014, 9(10), 1546-1551. doi: 10.1093/scan/nst147.