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応用脳科学アカデミー

2023年度

脳型知能とその工学応用:我妻 広明(九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授)

サイエンスにおいては、機械に感情を保有させる議論がある。人のような感情は「寿命」「進化」が必要と指摘もあるが、問題はその先である。「作込みの感情でない、内在し、中から生まれ出る」という主張は一理あるが、「偶然生物に感情の回路が備わったとして、なぜ淘汰されなかったか」に踏み込む必要がある。つまり、個を超えた、社会における感情の必要性である。自分の「痛み」は、相手の「痛み」になるか? 集団、社会、状況における「悲しみ」を理解、共感できるか。我々は物理的な痛みだけでなく、心の悲しみを持つ。だから、相手がこんなことをして欲しくない、これはとても危険なことである、こんなことはあって欲しくないという状況の認識ができる。これらの観点から機械(AI)と生物の痛み、そしてその先の倫理に言及する。シャノンの情報理論における「情報の量」の議論を超えた、生き物にとっての「情報の『質』」を扱う段階に来ている。

エンジニアリングにおいては、社会に持続的なイノベーションを作り出す仕組みづくりとして、インダストリー4.0が議論され、情報技術と製造技術の統合を行うことで、製造業の生産性を高める方策が進められている。ことに少量多品種生産、自動機械と人間の協働による生産工程の課題においては、現場における効果的なデータ蓄積とその分析のためのデータ構造や基盤が必要となる。従来は人手でやっていたデータサイクルを自動化しつつも、熟練技術者の気づき、ヒヤリ・ハットなど問題発生を未然に防ぐ方法論の導入が必要不可欠となっている。本講演では、熟練者の熟練者の気づき、脳型知能とその工学応用に注目しつつ、AI技術の現状と展望について議論する。

講師

我妻 広明 先生
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授

日時

2023年12月5日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)第3部 15:40~16:50
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。

場所

オンライン

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

我妻 広明(わがつま ひろあき)先生

現職

  • 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授

経歴

  • 1986年 – 1990年 NEC米沢日本電気株式会社 (NEC日本電気府中事業場出向PC-9801note開発)
  • 2000年4月 – 2003年3月 独立行政法人理化学研究所 基礎科学特別研究員
  • 2003年4月 – 2009年9月 独立行政法人理化学研究所 BSI創発知能ダイナミクス研究チーム 研究員
  • 2007年4月 – 2009年9月 理研BSI-トヨタ連携センター 研究員
  • 2009年10月 – 2012年3月 独立行政法人理化学研究所 BSI創発知能ダイナミクス研究チーム 客員研究員
  • 2009年10月 – 2022年11月 国立大学法人 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 准教授
  • 2012年1月 – 2018年3月 国立研究開発法人 理化学研究所 BSI 神経基盤情報センター 客員研究員
  • 2016年3月 – 2020年3月 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 Artificial Intelligence Research Center (AIRC) クロスアポイントフェロー
  • 2018年4月 – 2022年3月 国立研究開発法人 理化学研究所 脳神経科学研究センター(RIKEN-CBS) 客員研究員
  • 2022年12月 – 現在 国立大学法人 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授

研究概要

脳神経科学の知見や生物から学ぶ力学系記述を用いた脳型ロボットの研究を行っています。脳を複雑系として捉え、時間発展と情報生成装置としての原理記述について注目しています。身体性や構成論的アプローチを通して、非線形力学・振動同期現象の数理記述の可能性を探求し、「人」の主体性や社会性を、単なる要素分解や機械論に還元しない新たな科学の枠組みを脳科学に期待しています。

主な業績

書籍
  • Dimitrova, M., Wagatsuma, H. (2019): Cyber-Physical Systems for Social Applications, IGI Global.
  • 我妻広明(2017): 脳・身体知から自動運転まで(6章), 鳥海 不二夫 編「強いAI・弱いAI 研究者に聞く人工知能の実像」丸善出版.
  • Krichmar J, Wagatsuma H. (2011): Neuromorphic and Brain-Based Robot, Cambridge University Press. 他.
代表的な論文
  • Maniamma, J., Wagatsuma, H. (2020): A Semantic Web-based Representation of Human-logical Inference for Solving Bongard Problems, Journal of Universal Computer Science, Special Issue on New Trends in Logic Reasoning Approaches for Rational Decision Making, in press.
  • Singh, B., Wagatsuma, H. (2018): Two-Stage Wavelet Shrinkage and EEG-EOG Signal Contamination Model to Realize Quantitative Validations for the Artifact Removal from Multiresource Biosignals, Biomedical Signal Processing and Control, Vol. 47, pp. 96-114.
  • Komoda, K., Wagatsuma, H. (2017): Energy-Efficacy Comparisons and Multibody Dynamics Analyses of Legged Robots with Different Closed-loop Mechanisms, Multibody System Dynamics, Vol. 7, No. 3, pp. 657-664.
  • Ai, G., Sato, N., Singh, B., Wagatsuma, H. (2016): Direction and Viewing Area-Sensitive Influence of EOG Artifacts Revealed in the EEG Topographic Pattern Analysis, Cognitive Neurodynamics, Vol. 10, No. 4, pp.301-314, 他

代表的な外部予算

内閣府・経産省所管:

  • オントロジー推論のリアルタイム処理を実現する組み込み技術の実現と安全・安心分野への応用,NEDO「次世代人工知能技術社会実装」受託研究,代表
  • 平成30年度「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業(自動走行システムの安全性評価技術構築に向けた研究開発プロジェクト)」  (経産省) 分担 
  • データ駆動型人工知能と論理知識型 人工知能の融合による解釈可能な自動運転システムに関する研究,NEDO 「次世代ロボット中核技術開発」(次世代人工知能フレームワーク研究・先進中核モジュール研究開発),分担(H27〜H30)、他

文科省所管: i) 科研費

  • 脳-身体-環境における動的関係性を扱う情報の時空間階層性:ロボット設計原理の検討,新学術領域研究「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」公募班,代表 (H28〜29)
  • 科研新学術領域研究「共創言語進化」計画班「言語の起源・進化の構成的理解」,分担、他

文科省所管: ii) JST(産学連携関連)

  • CFRP弾性材の縫い込みを可能にする腰部負担軽減着衣とセミオーダー式フィッティング法の開発,受託研究,JST H29地域産学バリュープログラム,研究責任者 (H29〜30)、他

国際研究ファンド:

  • ニューロインフォマティクス国際連携(INCF Seed Funding 2017)、他

             

関連講義