ビジネスに活きる意思決定の脳科学~消費から経営まで:茨木 拓也(株式会社NTTデータ経営研究所 ニューロイノベーションユニット アソシエイトパートナー)
心理学・神経科学・消費者科学・計算科学の融合的な進化に伴い、消費者により大きな価値を届ける商品・サービスの開発を目指して、「脳・ココロ」ー「商品・サービス・広告」間のマルチモーダル・多次元情報モデリングが取られるようになってきた。
まず、消費者のバイアスについて考える。そもそも人間の消費意思決定は合理的なのか。「正しい」意思決定のイメージは、外界の情報を正確に取り込みながら、個人的な好みに基づいた判断過程を経て、最終的な行動に至るという一連の時間軸に沿ったものであろうが、現実にはそうでないことを紹介する。また、世界をゆがめて見るバイアスのかかった意思決定の事例を紹介する。なぜ脳は“バイアス”を持つのかに関する心理学的説明として、進化的・適応的に都合がよいものしか脳に処理させないことが背景にある可能性を指摘したい。さらに、消費者行動を考えるうえで認知バイアスと同じくらい大事な「学習」に関して、脳・神経系の基礎と機能から私たちが日々モノを買う仕組みまでを概観したい。
講師
茨木 拓也 先生
株式会社NTTデータ経営研究所 ニューロイノベーションユニット アソシエイトパートナー
VIE STYLE株式会社 Chief Neuro Technology Officer
日時
2023年7月25日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
※当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
茨木 拓也(いばらき たくや)先生
現職
- 株式会社NTTデータ経営研究所 ニューロイノベーションユニット アソシエイトパートナー
- VIE STYLE株式会社 Chief Neuro Technology Officer
経歴
- 2011年 早稲田大学 文学部 心理学科卒(B.A.)
- 2013年 東京大学 大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻 医科学修士課程 修了(MMedSC)
- 2014年 東京大学 大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻 医学博士課程 中退
- 2014年 株式会社NTTデータ経営研究所(ニューロイノベーションユニット)入社・コンサルタント
- 2018年 早稲田大学商学部 招聘講師
- 2019年 国際会議「Applying Neuroscience to Business」 実行委員長
- 2020年 VIE STYLE株式会社 執行役員 兼 最高脳科学責任者
- 2021年 慶應義塾大学医学部 訪問研究員。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 非常勤講師。内閣府PRISM・NICT「脳情報から知覚情報を推定するAI技術等の社会実装加速化に向けた検討会」構成員
- 2022年 東京大学計数工学科 非常勤講師
- 2023年 明治大学商学部 招聘講師
研究概要
私たちの脳は情報処理臓器です。脳・神経系が扱う情報を大まかに分けると、センサー系=外界や身体内部の状態を各種感覚器によって受容した感覚情報と、運動系=筋肉を動かす計画などの運動情報、そしてそれら「感覚-運動」を結ぶ記憶(赤い信号を見たらブレーキを踏む)・スキル(ボールがこの辺にきたらラケットをこう振る)・感情(嫌いな人を見たら避ける)や認知状態(”快適”・”眠い”といった瞬間的な状態や”うつ”といった定常性のある状態)といったものがあります。
このように種類や持続時間などは異なっても、脳に表現されている様々な情報やその処理様式の基礎科学的理解に基づき、脳情報の読み解き・書き込み・伝送・仮想化する技術をニューロテクノロジー、あるいは脳情報通信技術と総称しています。
私の仕事は、そうした新事業の可能性があふれている最新の神経科学の知見を社会・産業に応用するために以下を行うことです。
- 基礎研究上の成果を事業応用するための企画・提案
- 民間企業から依頼を受けた神経科学関連の受託研究開発支援
- 神経科学関連の事業開発支援・実行支援
- 関連分野の情報発信
主な業績
- Ming Chang, Takuya Ibaraki, Yasushi Naruse, Yasuhiko Imamura, Neural characterization of the “totonou” state associated with sauna use, bioRXiv, 2023年1月6日
- ブレイン・テックガイドブック作成委員会, Brain Tech guide book : ブレイン・テックのいまを知ろう, 2022年9月
- 茨木 拓也, 芸術・エンターテインメントとビジネスを結ぶニューロテクノロジー, 日本神経回路学会誌 29(3) 148-156, 2022年9月5日
- 渡邊崇, 茨木拓也, 砂川弘憲, 岡田大吾, 橋本学, 矢野友規, ウェアラブル外耳道脳波計を用いた内視鏡処置における鎮静深度推定法の検討, 日本臨床麻酔学会誌 42(6), 2022年
- KazutakaUeda, Yasuhiko Imamura, Takuya Ibaraki, The Development of a Eustress Sensing System Using In-Ear EEG, 2021 43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine & Biology Society (EMBC), 2021年10月
- Kazutaka Ueda, Yasuhiko Imamura, Takuya Ibaraki, The development of a eustress sensing system using In-Ear EEG, TechRxiv, 2021年6月
- Keita Umejima, Takuya Ibaraki, Takahiro Yamazaki, Kuniyoshi L. Sakai, Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval, Frontiers in Behavioral Neuroscience 15, 2021年3月19日
- Takeshi Uno, Kensuke Kawai, Katsuyuki Sakai, Toshihiro Wakebe, Takuya Ibaraki, Naoto Kunii, Takeshi Matsuo, Nobuhito Saito, Dissociated Roles of the Inferior Frontal Gyrus and Superior Temporal Sulcus in Audiovisual Processing: Top-Down and Bottom-Up Mismatch Detection, PLOS ONE 10(3) e0122580, 2015年3月