脳から考える情報医療とブレインヘルスケア:本田 学(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第七部 部長)
脳における情報処理の素過程を担っているのは化学反応、すなわち物質現象に他ならず、五感を介して脳に入力される情報は、究極的には脳の特定の部位に特定の化学物質を投与したのと同じ反応を引き起こす。すなわち脳においては、生命活動と情報処理が高度に一体化しており、このことを「〈物質〉と〈情報〉の等価性」と呼ぶ。この原理を応用することにより、脳における疾病のメカニズムを情報処理の側面から解明したり、五感を通した感覚情報を用いて生体に治療的介入をおこない望ましい反応を引き起こす〈情報医療〉を開発することが可能になる。本講演では、私たちが提唱する〈情報医学・情報医療〉の枠組みと、情報医療の一つとして現在取り組んでいる、人間の可聴域上限をこえた超高周波空気振動を豊富に含む音情報をもちいた情報環境医療の開発を紹介するとともに、情報医学や情報医療に基づくブレインヘルスケアを今後育成していくにあたって考えなければならない課題について取り上げる。
講師
本田 学 先生
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第七部 部長
日時
2023年7月4日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)第1部 13:00~14:10
当日の全体スケジュールはこちらをご覧ください。
場所
オンライン(Zoom)
お問い合せ先
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講師紹介
本田 学(ほんだ まなぶ)先生
現職
- 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第七部 部長
経歴
- 1988年京都大学医学部卒業。
- 1995年京都大学医学研究科博士課程修了。米国国立保健研究所(NIH)訪問研究員、自然科学研究機構生理学研究所准教授などを経て、2005年9月から現職。
- 国際情報医学学会(International Society of Information Medicine)vice-president、東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構連携研究者、東京農工大学客員教授、早稲田大学客員教授、日本女子大学非常勤講師などを兼務。
- これまでに、文部科学省学術調査官、科学技術・学術審議会専門委員などを務める。
研究概要
主な研究テーマは、脳情報から精神・神経疾患の病態解明と治療法開発に迫る「情報医学」の体系化、ハイパーソニック・エフェクトを応用した「情報環境医療」の開発、感性脳機能のイメージング、非侵襲脳刺激による機能的治療法の開発など。
主な業績
- 本田 学: 「情報医学・情報医療」の可能性. 人間情報学 快適を科学する, 近代科学者Digital, 東京, pp.74-82, 2021.
- 本田 学: 聴く脳・見る脳の仕組み. 音楽・情報・脳, 放送大学教育振興会, 東京, pp.22-41, 2017.
- 本田 学: 感動する脳の仕組み. 音楽・情報・脳, 放送大学教育振興会, 東京, pp.42-61, 2017.
- 本田 学: 音楽を感じる脳は変化を感じる脳. 音楽・情報・脳, 放送大学教育振興会, 東京, pp.62-78, 2017.
- 本田 学: 耳に聞こえない高周波が音楽の感動を高める. 音楽と脳(NPO法人脳の世紀推進会議編), クバプロ, 東京, pp.29-66, 2016.
- 本田 学: 感性と情動を生み出す脳. 質感の科学, 朝倉書店, 東京, pp.104-123, 2016.
- Honda M: Information Environment and Brain Function: A New Concept of the Environment for the Brain. Neurodegenerative Disorders as Systemic Diseases (Wada K., Ed.), Springer, Tokyo, pp.279-294, 2015.
- 本田 学: 脳と情報環境—脳科学から見た環境の安全・安心—. 脳の発達と育ち・環境. NPO法人脳の世紀推進会議編, クバプロ, 東京, pp. 9-45, 2010.