人間は社会的な動物だと言われる。言語をもち、他者と協力し、他者を欺くこともできる。しかし言語を介したコミュニケーションだけでなく、表情や仕草、うなずき、視線などの非言語でもコミュニケーションは私たちの社会性を支える重要な要素になっている。その中でも視線は、他者に見られる、他者を見るという関係性から自己や他者認識の発達・学習に関与し、ひいては他者の信念や願望などを推測する「心の理論」にも関係する。本講義では、このようなコミュニケーションを支える自己と他者の間で交わされる社会的シグナルの性質と、その脳内表現を探ることで、私たちの社会性がどのように発現してくるのかに関する心理学的・神経科学的研究を紹介する。これらの社会的インタラクションの脳内表現を探求することは、人とうまくコミュニケーションすることで関係性を維持し、人々と協力する人工知能の原理になるかもしれない。

講師

鮫島 和行　先生
玉川大学　脳科学研究所　脳システム研究センター主任　教授

日時

2022年8月10日（水）13:00～17:30（12:40より受付開始）
※鮫島先生の講義は、14:20～15:30です。

場所

オンライン講義←ハイブリッド開催より変更になりました

お問い合せ先

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講師紹介

鮫島 和行 （さめじま　かずゆき）　先生

現職

玉川大学　脳科学研究所　脳システム研究センター主任　教授

経歴

1999年東京農工大学大学院電子情報工学博士修了 博士（工学）
同年科学技術振興事業団 研究員
2003年 ATR脳情報研究所研究員
2005年 玉川大学学術研究所講師
2007年 同准教授
2016年から現在、玉川大学脳科学研究所教授

日本神経回路学会理事、動物心理学会、日本神経科学学会、 Society for Neuroscience、
電子情報通信学会、日本人間行動進化学会各会員

研究概要

意思決定の神経メカニズムを中心に、動物実験、心理実験、認知モデル、数理モデル、等の方法を組み合わせて様々なレベルでの脳の情報処理的理解をめざして、研究を進めている。行動中のサルの神経活動を電気生理学的に測定する方法と、機械学習の一種である強化学習の理論を使って、神経表現とアルゴリズムの研究を行ってきた。また、社会的な意思決定やコミュニケーションの意思決定をベイズ推定の枠組みで理解する試みや、ヒトと動物の間でのインタラクションを調べることで、自己と他者の関係性を処理する神経回路を探る研究などを行っている。

主な業績

• Nonomura, S., & Samejima, K. (2019). Neuronal representation of object choice in the striatum of the monkey. Frontiers in neuroscience, 13, 1283.
• Nonomura, S., Nishizawa, K., Sakai, Y., Kawaguchi, Y., Kato, S., Uchigashima, M., … & Kimura, M. (2018). Monitoring and updating of action selection for goal-directed behavior through the striatal direct and indirect pathways. Neuron, 99(6), 1302-1314.
• Samejima, K., Ueda, Y., Doya, K., & Kimura, M. (2005). Representation of action-specific reward values in the striatum. Science, 310(5752), 1337-1340.
• Li, G., Hashimoto, T., Konno, T., Okuda, J., Samejima, K., Fujiwara, M., & Morita, J. (2019). The mirroring of symbols: An EEG study on the role of mirroring in the formation of symbolic communication systems. Letters on Evolutionary Behavioral Science, 10(2), 7-10.
• 鮫島和行, 大北碧, 西山慶太, 瀧本彩加, 神代真里, 村井千寿子, & 澤幸祐. (2016). 人-動物間における社会的シグナル (< 特集> 認知的インタラクションデザイン学). 人工知能, 31(1), 27-34.