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応用脳科学アカデミー

2022年度

嗅覚の情報処理機構とヒト社会での香りの有効活用:東原 和成(東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 教授)

人間にとって、においや香りを感じる嗅覚は、料理をおいしく食べ、季節の移ろいなどを感じるために重要であり、生活のQOLに大きく影響します。においの感覚は、嗅覚受容体遺伝子といった先天的なもの、経験や学習など記憶によるもの、そして体調など身体の生理的な状況によるもの、といったふうに3つの因子によって影響をうけます。近年、分子生物学と神経科学の進展で、嗅覚の仕組みは、分子、受容体、脳神経、内分泌、行動レベルで解明されつつあります。2004年のノーベル医学生理学賞は嗅覚受容体遺伝子の発見に与えられました。また、嗅覚受容体は、2012年のノーベル化学賞の対象になった「Gタンパク質共役型受容体」のファミリーに属します。本講演では、嗅神経細胞に発現する嗅覚受容体がにおいを感知して、その信号が脳まで伝わるまでのメカニズムを概説し、嗅覚の感覚をどのようにして人間社会において活かしていくか、応用的な側面を議論したいと思います。

講師

東原 和成 先生
東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 教授

日時

2022年8月19日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※東原先生の講義は、15:40~16:50です。

場所

NTTデータ経営研究所 9階 セミナールーム

入館方法

JA共済ビルのエントランスフロアで受付を済ませてから、左側のエレベーターにて9階までお越しください。応用脳科学アカデミーの案内看板が掲示されています。
そちら側よりご入室いただきますと、右側奥に応用脳科学アカデミー受付(臨時設置)がございます。

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。

講師紹介

東原 和成(とうはら かずしげ)先生

現職

  • 東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 教授

経歴

  • 1989年 東京大学農学部農芸化学科卒業
  • 1993年 ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校化学科博士課程修了 (Ph.D)
  • 1993-1995年 デューク大学医学部博士研究員
  • 1995-1998年 東京大学医学部脳研究施設生化学部門助手
  • 1998-1999年 神戸大学バイオシグナル研究センター助手
  • 1999-2009年 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻准教授
  • 2009年- 現職
  • 2012-2018年 JST ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクト研究総括兼任
  • 2013-2016年 中国浙江大学客座教授兼任

研究概要

匂いやフェロモンの化学感覚の仕組みを、末梢の受容体から高次脳まで、分子レベル、細胞レベル、個体レベルで解明する研究。

嗅覚受容体の機能解析で世界で先駆的な研究をおこない、その後涙からタンパク質性フェロモンを発見するなどユニークな研究を展開。哺乳類のみならず昆虫も含めて、幅広いアプローチと対象生物で、嗅覚を介した行動と情動の分子・脳神経基盤に迫る。

主な業績

  • Shirasu, M., Ito, S., Itoigawa, A., Hayakawa, T., Kinoshita, K., Munechika, I., Imai, H.*, and Touhara, K.* “Key male glandular odorants attracting female ring-tailed lemurs” Current Biology 30, 2131-2138 (2020)
  • Horio, N., Murata, K., Yoshikawa, Y., Yoshihara, Y., and Touhara, K.* “Contribution of individual olfactory receptors to odor-induced attractive or aversive behavior in mice” Nature Communications 10, 209 (2019)
  • Osakada, T., Ishii, K.K., Mori, H., Eguchi, R., Ferrero, D.M., Yoshihara, Y., Liberles, S.D., Miyamichi, K.*, and Touhara, K.* “Sexual rejection via a vomeronasal receptor-triggered limbic circuit” Nature Communications 9, 4463 (2018)
  • Ishii, K., Osakada, T., Mori, H., Miyasaka, N., Yoshihara, Y., Miyamichi, K.*, and Touhara, K.* “A Labeled-Line Neural Circuit for Pheromone-Mediated Sexual Behaviors in Mice” Neuron 95, 123-137 (2017)
  • Shirasu, M., Yoshikawa, K., Takai, Y., Nakashima, A., Takeuchi, H., Sakano, H. and Touhara, K.* “Olfactory receptor and neural pathway responsible for highly selective sensing of musk odors” Neuron 81, 165-178 (2014)
  • Ferrero, D.M., Moeller, L.M., Osakada, T., Horio, N., Li, Q., Roy, D.S., Cichy, A., Spehr, M., Touhara, K., and Liberles, S.D.* “A juvenile mouse pheromone inhibits sexual behavior through the vomeronasal system” Nature 502, 368-371 (2013)
  • Yoshikawa, K., Nakagawa, H., Mori, N., Watanabe, H., and Touhara, K.* “Unsaturated aliphatic alcohol as a natural ligand for mouse odorant receptor” Nature Chem. Biol. 9, 160-162 (2013)
  • Sato, K., Tanaka, K., Touhara K.* “Sugar-regulated cation channel formed by an insect gustatory receptor” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 11680-11685 (2011)
  • Haga, S., Hattori, T., Sato, T., Sato, K., Matsuda, S., Kobayakawa, R., Sakano, H., Yoshihara, Y., Kikusui, T. and Touhara, K.* “The male mouse pheromone ESP1 enhances female sexual receptive behavior through a specific vomeronasal receptor” Nature 466, 118-122 (2010)
  • Kim, K., Sato, K., Shibuya, M., Zeiger, D.M., Butcher, R.A., Ragains, J.R., Clardy, J., Touhara, K. and Sengupta, P. * “Two chemoreceptors mediate the developmental effects of dauer pheromone in C. elegans” Science 326, 994-998 (2009)
  • Sato, K., Pellegrino, M., Nakagawa, T., Nakagawa, T., Vosshall, L.B., and Touhara, K.* “Insect olfactory receptors are heteromeric ligand-gated channels” Nature 452, 1002-1006 (2008)
  • Oka, Y., Katada, S., Omura, M., Suwa, M., Yoshihara, Y. and Touhara, K.* “Odorant receptor map in the mouse olfactory bulb: in vivo sensitivity and specificity of receptor-defined glomeruli” Neuron 52, 857-869 (2006)
  • Kimoto, H., Haga, S., Sato, K., and Touhara, K.* “Sex-specific peptides released from exocrine glands stimulate vomeronasal sensory neurons in mice” Nature 437, 898-901 (2005)
  • Nakagawa,T., Sakurai, T., Nishioka, T., and Touhara, K.* “Insect sex-pheromone signals mediated by specific combinations of olfactory receptors” Science 307, 1638-1642 (2005)
  • 2020年度 日本味と匂学会賞
  • 第20回 日本味と匂学会高砂研究奨励賞(2004)
  • 日本神経化学会奨励賞
  • 日本生化学会奨励賞
  • RH Wright Award(国際ライト賞)
  • 文部科学大臣表彰若手科学者賞
  • 読売新聞社 東京テクノフォーラム21 ゴールドメダル 受賞
  • 塚原仲晃記念賞
  • 日本学術振興会賞
  • 日本学士院学術奨励賞
  • アステラス病態代謝研究会 最優秀理事長賞
  • 井上学術賞
  • Kunio Yamazaki Distinguished Lectureship Award
             

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