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応用脳科学アカデミー

アドバンス 2021年度

言語の創造性と人間の脳:酒井 邦嘉(東京大学 大学院総合文化研究科 教授)

身近な言語能力から、脳の不思議や人間性の本質について考えてみたいと思います。人間の言語は、「再帰的計算」という本質的な特徴を備えています。再帰的計算に基づく階層的な構造は、自然言語である音声言語や手話にはもちろんのこと、芸術作品にまで反映されていて、興味深い性質です。我々のグループは文法処理に選択的な脳活動をfMRIで調べて、「文法中枢」が左下前頭回と左運動前野外側部であることを明らかにしました。さらに文法判断を適切に調べることで、文法中枢の損傷に伴う文法障害(失文法)を明らかにしました。以上の成果は、言語の核心となる文法機能が大脳皮質の一部に局在するという説(機能局在論)を実証するもので、P・ブローカの流れを汲む脳科学の重要な進展です。

講師

酒井 邦嘉 先生
東京大学 大学院総合文化研究科 教授

日時

2021年10月26日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※酒井先生の講義は、14:20~15:30です。

場所

オンライン開催

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、 「各種お問い合わせフォーム」 より、お問い合わせください。

講師紹介

酒井 邦嘉(さかい くによし)先生

現職

  • 東京大学 大学院総合文化研究科 教授

経歴

  • 1992年 東京大学 大学院理学系研究科 博士課程修了 理学博士
  • 1992年 東京大学 医学部 第一生理学教室 助手
  • 1995年 ハーバード大学 医学部 リサーチフェロー
  • 1996年 マサチューセッツ工科大学 客員研究員
  • 1997年 東京大学 大学院総合文化研究科 助教授
  • 2012年 東京大学 大学院総合文化研究科 教授
  • 2013年 東京大学 理学系研究科 物理学専攻 教授(兼任)

研究概要

脳機能イメージング技術を用いて、言語脳科学を中心とした最先端の研究を行っている。言語は、脳における最も高次の情報処理システムである。われわれが母語を用いて発話したり思考したりするときには、「普遍文法」に基づく言語情報処理を行っている。人間の本性につながる普遍文法の原理が脳でどのように実現されているか、という究極の問題に取り組んでいる。

主な業績

  • Sakai, K. L.: Language acquisition and brain development. Science 310, 815-819 (2005).
  • 酒井邦嘉 『言語の脳科学-脳はどのようにことばを生みだすか』 中公新書 (2002)
  • 酒井邦嘉 『科学者という仕事-独創性はどのように生まれるか』 中公新書 (2006)
  • 酒井邦嘉 『脳の言語地図』明治書院 (2009)
  • 酒井邦嘉 『脳を創る読書-なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか』実業之日本社 (2011)
  • 酒井邦嘉(編)・曽我大介・羽生善治・前田知洋・千住博 『芸術を創る脳-美・言語・人間性をめぐる対話』 東京大学出版会(2013)
  • 酒井邦嘉 『考える教室』実業之日本社 (2015)
  • 酒井邦嘉 『科学という考え方-アインシュタインの宇宙』 中公新書 (2016)
  • 酒井邦嘉 『高校数学でわかるアインシュタイン-科学という考え方』 東京大学出版会 (2016)
  • 2002年第56回毎日出版文化賞、2005年第19回塚原仲晃記念賞受賞
  • 研究室ホームページ:▶ https://www.sakai-lab.jp/
             

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