花きの観賞が心と身体、脳へ与える効果:望月 寛子(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 上級研究員)
キレイな花を見て「癒された」と感じたことはありますか?ストレス社会といわれる現在では、多くのヒトが癒しを求めているのかもしれません。では、この「癒された」という感覚の背後にはどのようなメカニズムがあるのでしょうか?本講義では、花の観賞という行動を通して得られる癒しのメカニズムを、心理学、生理学、脳科学の視点から解説します。私たちのこれまでの研究によって、花の観賞は脳内扁桃体の活動を抑制し、上昇していた血圧やストレスホルモンを低下させることが示されています。また、同時にヒトの情動(心の状態)も変化させます。心と身体、そして脳が一体となって変化する癒しのメカニズムを実験データを用いてご説明します。さらに、医療分野で利用される花のトピックをご紹介したいと思います。認知機能やQOLの改善を目指して行っているフラワーアレンジメント・リハビリテーションです。「花」にまつわる健康とサイエンス。是非、リラックスしてお聴きください。
講師
望月 寛子 先生
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 上級研究員
日時
2021年9月30日(木)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※望月先生の講義は、14:20~15:30です。
場所
オンライン開催
お問い合せ先
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講師紹介
望月 寛子(もちづき ひろこ)先生
現職
- 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 上級研究員
経歴
- 1997年 筑波大学第二学群人間学類 卒業
- 2002年 東京大学大学院総合文化研究科 生命環境科学系修了・博士(学術)
- 2003年 日本学術振興 特別研究員(PD)
- 2006年 農業・食品産業技術総合研究機構
研究概要
学時時代はアルツハイマー病やパーキンソン病の記憶障害に関する研究を行っていました。卒業後は学術振興会特別研究員として昭和大学医学部神経内科に在籍し、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)を用いた脳科学研究に携わり、現在は農林水産省所管の研究機関に在籍しております。現在の研究テーマは、’花’がヒトに与える効果や、’おいしい食事’とQOLとの関連を明らかにすることです。心理学・脳科学・農学と複数の分野にかかわりながら、豊かな生活の実現を目指して研究を行っています。
主な業績
- Mochizuki-Kawai H., Matsuda I., Mochizuki S. (2020) Viewing a flower image provides automatic recovery effects after psychological stress. Journal of Environmental Psychology. 70, 101445.
- Mochizuki-Kawai H., Kotani I., Mochizuki S., Yamakawa Y. (2018) Structured Floral Arrangement Program Benefits in Patients with Neurocognitive Disorder, Frontiers in Psychology, 9, 1328.
- Mochizuki-Kawai H, Niki T, Shibuya K, Ichimura K. (2015) Programmed cell death progresses differentially in epidermal and mesophyll cells of lily petals. PLOS ONE. 10, e143502.
- Mochizuki-Kawai H, Yamakawa Y, Mochizuki S, Anzai S, Arai M (2010) Structured floral arrangement program for improving the visuospatial working memory in schizophrenia, Neuropsychological Rehabilitation, Vol. 20, 624-636.
- Mochizuki-Kawai H, Mochizuki S, Kawamura M (2010) A flexible sequential learning deficit in patients with Parkinson’s disease: a 2 x 8 button-press task, Experimental Brain Research, Vol. 202, 147-153.
- Mochizuki-Kawai H, Tsukiura T, Mochizuki S, Kawamura M (2006) Learning-related changes of brain activation in the visual ventral stream: an fMRI study of mirror-reading skill: Brain Research, Vol. 1122, 154-160.
- Mochizuki-Kawai H, Mochizuki S, Midorikawa A, Yamanaka K, Tagaya H, Kawamura M (2006) Disappearance of memory fragments in patients with Alzheimer’s disease: evidence from a longitudinal study of visual priming, Neuropsychologia, Vol. 44, 1114-1119.
- Mochizuki-Kawai H, Kawamura M, Hasegawa Y, Mochizuki S, Oeda R, Yamanaka K, Tagaya H (2004) Deficits in long-term retention of learned motor skills in patients with cortical or subcortical degeneration, Neuropsychologia, Vol. 42, 1858-1863.