脳のゆらぎを活かした処理機構の基本的なメカニズム:下川 哲也(情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳機能解析研究室 主任研究員)
近年注目されている深層学習では、学習過程において膨大な学習データが必要となり、かつ、なるべくデータの欠損やエラーがないように前処理(データのクレンジング)が必要であったり、学習精度向上のために膨大なパラメータの最適化が必要であったりと、どの工程においても膨大な計算量が求められる。
その一方で、ヒトの脳は、神経細胞という生きたソフトマテリアルで構成され、熱雑音などによる「ゆらぎ」に常にさらされながらも、その膨大な要素数(10の10乗個の神経細胞)とその膨大な組み合わせのもとで、これまでの進化の過程で獲得された仕組みにより、これまでの工学的発想からは考えられないような低い消費エネルギー(20ワット程度)で、柔軟な認知機能を実現している。
本講義では、これまでの脳科学的研究によって明らかにされた結果をもとに、脳のゆらぎを活かした情報処理機構の基本的なメカニズムを紹介する。
講師
下川 哲也 先生
情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳機能解析研究室 主任研究員
日時
2021年11月17日(水)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※下川先生の講義は、13:00~14:10です。
場所
入館方法
JA共済ビルのエントランスフロアで受付を済ませてから、左側のエレベーターにて9階までお越しください。9階に着きましたら、片側のガラス越しに社名が掲示されています。そちら側よりご入室いただきますと、右側奥に応用脳科学アカデミー受付(臨時設置)がございます。
お問い合せ先
本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。
講師紹介
下川 哲也(しもかわ てつや)先生
現職
- 情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 脳機能解析研究室 主任研究員
- 大阪大学 大学院生命機能研究科 招へい准教授
- 神戸大学 大学院保健学研究科 客員准教授
経歴
- 2001年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程後期修了
- 2001年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科助手
- 2006年11月 大阪大学大学院生命機能研究科特任准教授
- 2010年4月 情報通信研究機構に入所、現在に至る。
研究概要
脳的な仕組みや構造に基づく未来型情報ネットワークおよびコミュニケーション技術設計の研究に携わっている。
現在、fMRI実験データから抽出した機能的脳ネットワークの複雑ネットワーク解析の研究を進めており、研究結果をこうした臨床応用に適用することも計画している。
ディフォルトモードネットワーク、レチノトピー写像、複雑ネットワーク解析
主な業績
- Tetsuya Shimokawa, Kenji Leibnitz, Ferdinand Peper: “Stochastic stability of a neural model for binocular rivalry” Proceedings of the 2012 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA2012), pp. 739-742, Oct. 2012.
- Tetsuya Shimokawa, Kenji Leibnitz, Ferdinand Peper: “Complex network analysis of retinotopic maps in the human brain” Proceedings of the 2013 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA2013), pp. 122-125, Sep. 2013.
- 下川哲也: 「グラフ理論」 神経心理学、Vol. 34, No. 3, pp. 200-208, Sep 25, 2018.
- 下川哲也: 「脳神経外科と数理学~グラフ理論」 No Shinkei Geka, Vol. 48, No. 3, pp. 275-282, 2020.