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応用脳科学アカデミー

アドバンス 2021年度

思いやりをもって協調的インタラクションを行う脳認知アーキテクチャ:大森 隆司(玉川大学工学部 脳科学研究所 学術研究所 教授 )

人間の行動が広義の価値知覚に駆動されるということは認知科学,行動経済学などで広く知られた事実である.価値に導かれる点は思考も同様であろう.古典的AIでは,推論を離散的な事象の間のゴール探索と定義し,多くの論理様の推論手法を生み出してきた.また最近のNNは,試行錯誤と入力データの連続空間中での関数近似により,強化学習などの価値最大化のための行動決定を実現している.しかし,現在のAIの推論能力は人間の推論に大きく劣る.人と共に働くことのできる次世代のAI開発のためにも,人の脳の推論過程の理解が必要である.

人の思考には,瞬間的に判断する直観的思考と,意識的に推論を進める論理的思考がある.特に後者は意識に関わる点で興味深いが,その脳メカニズムについては,現時点では理論は少ない.そこで本研究では,意識の脳モデルとしてGlobal Workspace Theory(GWT)を想定し,その最も単純化したプロトタイプとして,広義の価値の知覚に駆動された連想記憶による直観的推論と論理的推論の脳認知アーキテクチャを解説する.

価値に駆動される推論は,人間のコミュニケーションの理解にもつながる.我々は,自分の意思決定に価値推論を用いるが,そこに他者の価値の推論機構を付加すると,思いやりを持ってインタラクションするAIが実現できそうである.当日は,価値に駆動された推論機構のモデルと,その延長としての他者への思いやりを実現するAIの設計原理について議論する.

講師

大森 隆司 先生
玉川大学工学部 脳科学研究所 学術研究所 教授

日時

2021年10月12日(火)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※大森先生の講義は、15:40~16:50です。

場所

オンライン開催

お問い合せ先

本アカデミーに関するご質問等は、「各種お問い合わせフォーム」より、お問い合わせください。

講師紹介

大森 隆司(おおもり たかし)先生

現職

  • 玉川大学工学部 脳科学研究所 学術研究所 教授

経歴

  • 1978年3月 東京大学工学部計数工学科卒業
  • 1980年3月 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
  • 1981年4月 東京大学工学部 助手(1986年3月まで)
  • 1986年4月 東京農工大学工学部 講師・助教授
  • 1995年4月 東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科 助教授
  • 1998年7月 東京農工大学工学部 教授
  • 2000年5月 北海道大学大学院工学研究科 教授
  • 2004年4月 北海道大学大学院情報科学研究科 教授
  • 2006年4月 玉川大学学術研究所 教授
  • 2007年4月 玉川大学工学部・脳科学研究所 教授
  • 2015年4月-2017年3月 日本認知科学会 会長
  • 2017年4月-2019年3月 日本神経回路学会 会長
  • 2021年4月 玉川大学脳科学研究所特別研究員/日本大学情報科学研究所上席研究員

研究概要

人間の知的機能や心の機能についての脳での実現メカニズムを、情報論的な立場から議論し、工学的な手段で実現できるレベルでの理解と実現を目指している。

主な業績

  • 長田悠吾,石川 悟,大森隆司,森川幸治:意図推定に基づく行動決定戦略の動的選択による協調行動の計算モデル化,認知科学,Vol.17,No.2,pp.270-286,2010
  • 岩崎安希子, 下斗米貴之, 阿部香澄, 中村友昭, 長井隆行, 大森隆司: 遊びロボットによる子どもの性格傾向の推定に関する研究, 日本感性工学会論文誌, 第12巻, 1号, pp.219-227, 2013
  • 高橋英之, 大森隆司:社会認知における「社会的思い込み効果」の役割とその脳内メカニズム, 認知科学,Vol.18,No.1, pp138-157,2011
  • Miyata M., Omori T. : Modeling emotion and inference as a value calculation system, BICA2017, 2017
  • Takahashi H., IZUMA, Matsumoto M.,Matsumoto K., Omori T. : The anterior insula tracks behavioral entropy during an interpersonal competitive game, PLOS ONE,2015
  • Miyata M., Omori T. : Emergence of symbolic inference based on value-driven intuitive inference via associative memory, BICA 2018
  • 宮田,大森:価値に駆動された連想記憶に基づく人の推論過程の統合モデルの提案,知能と情報Vol.31,No.3,pp.712-721,2019
  • 大森,宮田:ヒト脳にシンボル的な思考を生み出す脳アーキテクチャについて,人工知能学会研究資料 SIG-AGI-014-07, 人工知能学会,2020
  • 大森,宮田:ヒト脳にシンボル的な思考を生み出す脳アーキテクチャについて,人工知能学会研究資料 SIG-AGI-014-07,人工知能学会,2020

             

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