科学技術の社会的価値:神里 達博(千葉大学 大学院国際学術研究院 国際教養学部 教授)
科学技術が社会のあらゆる場面に浸潤し、さまざまな相互作用のもとにある現代は、もはや科学技術の「専門家」だけにその管理を任せておくことが難しい時代に入っているといえるだろう。具体的には、先端的な医療・生命科学や、人工知能や自動運転などを含む情報技術、またエネルギーや環境問題の領域などで、この傾向は顕著である。それは、新たな政治と科学の融合的問題域の出現を意味している。しかしながら、いわゆる「専門性の壁」はむしろ高くなっており、科学的知識や技術の価値的な側面について、専門家以外の人々も一緒に議論していくのは、必ずしも容易なことではない。このような状況を背景に、科学技術と社会のさまざまな相互作用について、社会的、法的、倫理的側面から検討するための活動、「ELSI」の重要性が増している。本講義では、このような考え方が生まれてきた歴史的経緯について確認した上で、私たちの社会が今後、適切に科学技術を発展させ、またマネジメントしていく上で、どのような考え方が重要になってくるか、概観してみたい。
講師
神里 達博 先生
千葉大学 大学院国際学術研究院 国際教養学部 教授
日時
2021年8月6日(金)13:00~17:30(12:40より受付開始)
※神里先生の講義は、13:00~14:10です。
場所
オンライン開催
お問い合せ先
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講師紹介
神里 達博(かみさと たつひろ)先生
現職
- 千葉大学 大学院国際学術研究院 国際教養学部 教授
経歴
- 2008年1月 – 2012年3月 東京大学 大学院工学系研究科 特任准教授
- 2012年4月 – 2015年9月 大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター 特任准教授
- 2014年4月 – 現在 朝日新聞客員論説委員
- 2015年10月 – 2016年3月 千葉大学 高等教育研究機構 教授
- 2016年4月 – 現在 大阪大学 客員教授
- 2016年4月 – 現在 千葉大学 国際教養学部 教授
- 2020年4月 – 現在 千葉大学 大学院 国際学術研究院 教授、総合国際学位プログラム長
- 2020年10月 – 現在 日本学術会議 連携会員
研究概要
専門分野は科学史、科学技術社会論、リスク論。社会のなかの科学技術をどう位置づけていくべきか、社会的、政治的、文化的、歴史的側面などから検討している。最近のおもな関心は、ITとBTの境界領域や、生態学の社会的意味、リスクコミュニケーション論など。またコロナ・パンデミック後の社会についても関心を持っている。博士(工学)。
主な業績
- 『リスクの正体-不安の時代を生き抜くために』(岩波新書,2020)
- 『コロナ後の世界: いま、この地点から考える』(共著,筑摩書房,2020)
- 『ブロックチェーンという世界革命-価値観を根本から変えるテクノロジーの正体とは』(河出書房新社,2019)
- 『文明探偵の冒険-今は時代の節目なのか』(講談社現代新書,2015)
- 『没落する文明』(共著,集英社新書, 2012)
- 『食品リスク-BSEとモダニティ』(弘文堂,2005)
ほか